【本日のお悩み】
○子どもとスーパーに行くと、毎回お菓子を買ってもらえると思っている。買わないと泣き叫ぶから、買わざるを得ない
○宿題をしないから、毎日子どもを説得して宿題をさせている
○子どもがおもちゃを投げて壊す。自分が投げたのに、おもちゃが壊れると泣く
お悩み解消ヒント:子どもの『困った』行動は、大人の『困った』行動
タイトルにもあるように、今回は応用編です。児童福祉施設などで活用されているテクニックのひとつをご紹介します。
情報量も多く、読む人にとってはちょっと胸が痛い内容かもしれません。時間と心に余裕があるときにお読みいただけるとうれしいです。
子どもの『困った』行動というのはよく聞かれる文言ですが、困っているのは大人と子ども、どちらでしょう?
子どもの困った行動というのは、実は子どもが自分の意見を主張しようとしている証拠なんです。ただ、意見の適切な主張方法がわからないから、自分の知っている「泣く」「叫ぶ」「壊す」「投げる」といった方法を取っているだけなんです。
子どもからすれば「大人がぼくたちを困らせてるんだ!だってぼくたちはどう主張すればいいかわからないんだもの。大人ほど冷静じゃないし、物事も知らないんだから。教えてよ!」といった具合でしょうね。
むしろ、子どもの困った行動と呼ばれるものは、大人が発端になっていることがほとんどなんです。
我々大人の起こした行動によって、子どもが誤った学習をし、学習した行動を取り続けている結果が『子どもの困った行動』なんですね。⇒ABAでは、これを【誤学習】と言います
お悩みに挙げた例は、どれも子どもが誤学習をしている内容です。
○お菓子を買ってほしいから泣き叫ぶ→お菓子を買う→泣き叫べばお菓子を買ってもらえる
○宿題が面倒→大人が話を聞いてくれる→じゃあ宿題をしなければ大人にもっと話を聞いてもらえる
○手が滑って投げたおもちゃが壊れちゃった。悲しい→大人がおもちゃを持って寄ってきた。しかも頭を撫でて構ってくれた→おもちゃを投げて壊せば大人の注意を引ける
では、子どもが誤学習で得た行動は、どうやって訂正していけばいいのでしょうか。
具体的な方法:ABAで子どもの行動を変える
ABAとは、応用行動分析学と呼ばれる手法です。
簡単に説明すると、行動の基本は【子どもが行動(泣く、怒るなど)を起こす】→【大人が反応】→【同じ反応を求めて子どもが再び行動(泣く、怒るなど)を起こす】です。
ABAでは、この【大人が反応】の部分が重要で、子どもの行動を強めたり弱めたりする要因になっています。
お悩みで挙げたスーパーの例で説明しましょう。
スーパーでお菓子を買ってもらったことが嬉しくて、子どもはスーパーに行く度にお菓子をねだる
↓
毎回お菓子を買うわけにはいかないので、親は「今日は買わない」と伝えるが、子どもはお菓子を買ってもらいたくて大泣きする
↓
スーパーで泣かれると店の迷惑にもなると思い、親は仕方なくお菓子を買う
↓
子どもは「泣けばお菓子を買ってもらえる」と学習し、親が何を言おうとお菓子を買ってもらえるまで泣き続ける
子どもが誤学習している泣けばお菓子を買ってもらえるという行動。これは親の仕方なくお菓子を買うという行動が、子どものお菓子を買ってもらえるまで泣く行動を強化しているんです。
子どものお菓子を買ってもらえるまで泣く行動を消去するには、親が仕方なくお菓子を買うことをやめなければなりません。
子どもの行動を強化する要因がなくなれば、子どもの誤学習した行動は自然と消えていきます。
ただし、行動を消去するうえで注意すべきことがひとつあります。【消去バースト】と呼ばれる反応です。
消去バーストというのは、誤学習した行動を強化する要因がなくなったことで、誤学習した行動がさらに強く出ることを言います。
お悩みの例で言うと、親が何を言おうとお菓子を買ってもらえるまで泣くです。
お菓子を買ってもらえないと知った子どもは、さらに泣きます。叫ぶかもしれませんし、スーパーの床に寝転ぶかもしれません。
ここが踏ん張りどころです。
消去バーストを乗り越えれば、誤学習した行動は消去されていきます。
逆に、消去バースト中に親が仕方なくお菓子を買うをしてしまうと、子どもは「なるほど。これだけ泣けば買ってもらえるんだ」と学習し、今まで以上に泣く行動へ移ってしまいます。誤学習の強化ですね。
ABAの基本は『望ましい行動は強化して、望ましくない行動は消去していく』です。
子どもが望ましい行動をしたら、褒めたりご褒美をあげてその行動を強化してください。
望ましくない行動は、大人の何がその行動を強化してしまっているのかを見つけて、消去バーストに備えてください。
お役立ち情報
ABAについては、わかりやすいサイトや本も出ているので、興味がある方はそれらも参考にしてみてください。
研修や講習も行われているようです。
さいごに
ABAは、強度行動障害の改善に効果的な手法として知られています。自傷行為や他害行為、大声や暴れるといった行動が見られる子どもの療育として、児童福祉施設ではよく活用されている理論です。
応用行動分析学という名前のとおり、ABAの基本は行動の分析です。ABAを活用するときは、まず子どもの行動観察をしてください。
子どもがなぜその行動をしているのか、何が強化の要因になっているのかを見極めなければ、ABAは効果がないどころか、逆効果になる可能性もあります。
強度行動障害でお悩みの方は、一度専門の機関に相談することをおすすめします。ABA療育だけでなく、子どもに合った療法を提供しているところもあるので、色々と話を聞いて、実際に見てみるのもいいかもしれません。
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